私たち太極拳横浜練習会が学ぶ百式太極拳は、【終南形意八卦門派】と呼ばれる拳法流派の達人・王樹金先生により、日本に伝えられました。流派名の由来は、現在の中国・陝西省(せんせいしょう)西安の南東にある山、終南山にあります。また、「形意八卦」というのは、中国拳法の形意拳(けいいけん)と八卦掌(はっけしょう)のことであり、この二つの拳法と太極拳を合わせて【内家拳】といいます。
太極拳は、13世紀に実在したとされる道教の道士、張 三丰(ちょうさんぽう)を開祖としています。太極拳は長い歴史の中で数々の武術家により、五大流派に分かれていきました。陳・楊・呉・孫・武—五大流派それぞれに長所と短所があったため、各流派の長所を集大成した最強の太極拳を作ろうとする動きが近代になってから始まりました。
その動きは日中戦争を機に実現することになります。当時の中国政府・国民党の要請を受けた武道の達人が20名ほど集められ、國術(武道)編成委員会が発足しました。冒頭にご紹介した王樹金先生も委員の一人として参加され、ついに五大流派全ての真髄を集めた太極拳が完成しました。それが百式太極拳の原型です。
王樹金先生は、その太極拳にご自分の専門であった形意拳、八卦掌の技を取り入れ、さらに進化させました。それこそが私たちの練習する【百式太極拳】であり、王樹金先生が初めて日本に伝えた太極拳もこの【百式太極拳】です。
王先生は、文化大革命を行なっていた中国共産党の迫害から逃れるため、国民党が逃れた台湾に拠点を移しました。その後、ご自分の別名から名付けた「誠明國術館」を創設して武道を指導されたことから、百式太極拳は「誠明太極拳」と呼ばれることもあります。また、「99式太極拳」とか「双辺太極拳」と呼ばれるものは兄弟分に当たります。
現在日本で広く知られている太極拳は、「簡化24式太極拳」と呼ばれているものですが、これは戦後、中国共産党が制定したものであり、今では体操や舞踊に近いものとなっています。私たちの練習する【百式太極拳】も、優雅に、柔らかい、脱力した動きで行ないますが、その中には形意拳や八卦掌といった本格拳法の要素を色濃く残しているため、見た目の特徴としてはより実戦、護身術に近いものになっています。
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